一億光年の恋 11話
天馬の予想通り、各家庭の反応は芳しくなかった。
ただ、無気力状態だった天馬が積極性を見せ始めたことを喜んだ天馬の両親と井川の後押しもあり、最終的に家族同伴で全員が別荘を訪れることになった。
学校へ行ける状態ではなかったこともあり、気分を変えるという意味もあったのかもしれない。
夕方を過ぎての到着になったので、全員今日は洋館に泊まることになる。静養には持ってこいの場所ということも、多少は有利に働いたのかもしれない。
寮で別れてから、そう長い時間が経ったわけではなかった。だけれど、玄関ホールで全員を出迎えた天馬は、ずいぶんと久しぶりに顔を合わせるような気がした。
椋は静かな笑みを浮かべているけれど少し無理をしている。幸はいつもの澄まし顔がわずかにぎこちない。
九門の笑みはどこかまだ硬さを残している。「お土産だよ~」と言ってさんかくクンを差し出す三角は、やさしさの奥にほんの少し悲しさをにじませていた。
それぞれの家族に挨拶をしてから、天馬はしばらく自分たちだけにしてほしいと頼む。不安そうな顔を浮かべるのも当然だと思った。
だけれど、どうしてもこれだけは譲れなかったのだ。頭を下げて頼もうとすると、その前に声がした。一緒にやって来ていた十座だった。
「――天馬。無茶なことはしないと約束できるか」
真っ直ぐとしたまなざしで、十座は問う。
夏組の仲の良さは、誰もがよく知るところだ。他の組もそれぞれが特別なつながりを結んでいるけれど、夏組ほど全員一緒にいようとするわけではなかった。
6人でいること。その意味を全員が理解して、一緒に手をつないでいようとするのが夏組だった。だから、一人が欠けてしまった今の状況が、どれほどまでに大きな傷になっているかは言うまでもなかった。
だからこそ、夏組だけにすることに不安を覚えているのだ。
具体的に何かが起きると思っているわけではない。ただ、彼らだけにしてしまえば全員が倒れてしまうのではないかと、決定的に立ち上がれなくなってしまうのではないかと恐れている。
天馬は十座を見つめた。真摯なまなざしに応えるように、十座をはじめとした彼らの家族の憂いも不安も全部飲み込んで、それでも強い意志を宿した目で。
「約束する。こいつらを傷つけることは絶対にしない」
きっぱりと告げた。十座はにらみつけるような強さで天馬を見つめていたけれど、数秒してふっと息を吐いた。わかりにくい笑みを浮かべると「わかった」と答える。
それから、天馬たちを見守っていたそれぞれの家族のほうへ振り返ると、切々とした声で言った。
「俺からもお願いします。天馬は必ず約束を守るやつです。天馬がそう言うなら夏組全員、絶対に大丈夫だからこいつらだけにしてやってくれませんか」
そう言って深々と頭を下げる。天馬も同じように頭を下げれば、慌てたような調子で「そんな、二人とも頭を上げて」と言われた。
それぞれの家族は、決して天馬を信用していないわけではないのだ。今まで夏組として過ごしてきた日々を知っているから、息子たちがどれほどまでにそのつながりを大事にしてきたかも、身に染みてわかっている。
それでも、今身にふりかかる現実があまりにも残酷で、新たな傷がついてしまうことを恐れて簡単にうなずけなかった。
だけれど、天馬だけではなく、MANKAIカンパニーの一員として十座にまで頭を下げられては。まだ年若い二人の、切実な決意を目の当たりにしては。その願いを叶えてやる以外の選択肢なんてなかったのだ。