一億光年の恋 27話




 一成と何でもない話をしているうちに、画材屋へ到着した。真剣な顔で品物を選ぶ一成を見るのが新鮮で、じっと見つめていたら「あんまり見られると照れちゃうよん」と笑っていた。
 その耳は本当に少しだけ赤かったので、天馬は何だかどぎまぎしてしまって一成の顔が見られない。
 店内を歩くと、天馬にはなじみのない品物が多く並んでいる。画材屋なんて来たことがないからそれも当然だろう。
 いくつか見て回っていると、必要なものを選び終えた一成がやってきてあれこれと解説してくれた。日本画に使うという岩絵具の話を語る時は特に嬉しそうで、天馬はほほえましい気持ちでそれ聞いている。

「ありがとねん、テンテン! 夜になると出かけらんないから、テンテンが来てくれて嬉しかったよん」

 店を出ると、一成は開口一番そう言った。天馬はゆるく首を振って「大したことじゃない」と答える。それから、そっけなかったろうかと思い直して言葉を継ぐ。

「――帰り道とかじゃなくて、夜に外歩くのも新鮮だしな」
「たかし~! 夜の散歩って感じだし、星も見えるしねん!」

 言いながら、一成は立ち止まって空を見上げる。満天の星空、というわけではないけれど今日は何だか星がよく見える気がした。

「近日点通過したらめっちゃ綺麗になるから、一緒に彗星見ようねん!」

 きらきらと笑う一成が言うのは、最近何度か口にしている彗星の話だ。50年一度くらいの頻度で訪れる彗星で、10月には綺麗な尾を持つようになるから夏組全員で見たい、と言っていた。
 夏に全員で花火をした時も彗星の話をしていたし、9月に入って以降も度々この話を聞いているので天馬も何となく彗星のことは意識するようになっていた。
 二歩、三歩と一成が弾む足取りで先を進む。少しだけ前を行く一成が何だか嬉しそうで、天馬の気持ちも弾んだ。
 ささやかな何でもない時間だ。それを喜んでくれることが嬉しかったし、こんな時間をもっと重ねていけたらいいなと思う。
 ただ、あまり離れてしまうと一緒に来た意味がない。追いつこうと足を踏み出しかけるけれど、それより速く声が響いた。

「え、もしかして皇天馬!?」

 反射的に顔を向けると、商店街の細い路地から大通りに出てきた集団の一人だった。全員似たような服を着ていて、どうやら何かのスポーツチームのユニフォームらしい。
 そういえば、今日は大きなスポーツ大会があると誰かが言っていたな、と天馬は思い出す。

「本物!?」
「天鵞絨町に住んでるとか聞いたことあるかも!」

 お酒でも入っているのか、陽気な集団があっという間に天馬を取り囲む。
 いつも通りサングラスと帽子は着用しているけれど、天馬の顔はだいぶ知られている。皇天馬である、と見抜くことはそう難しい話ではないのだ。

「握手してください!」
「サイン、駄目ですか!?」

 口々に告げられる言葉に、天馬はすぐに雰囲気を切り替える。俳優皇天馬の顔になると、慣れた調子でファンサービスを開始する。
 ちらりと視線を向ければ、遠巻きにこちらを見ている一成は何だか面白そうな表情をしていた。
「さっすがテンテン、大人気じゃん」と書いてありそうな顔に、視線だけで「ちょっと待ってろ」と告げれば一成はきちんと受け取ってくれたらしい。指でオッケーサインを出してくる。
 集団は思ったよりも人数が多かった。ただ、好意的に皇天馬を応援してくれる人たちだし、無下に扱うつもりはない。
 一人ずつにきちんと対応しながら、一成へ視線を向ける。スマートフォンを向けて天馬の様子を写真に撮っているので、インステあたりに上げるつもりなのかもしれない。
 そんなことを考えながら握手をしたりサインを書いたりしていると、視界の端で一成に近づく人影をとらえた。誰か知り合いでもいただろうか、と視線を向けると見知った顔だった。
 警官の制服に身を包んだ、がっしりした体格の短髪の青年。一成が通り魔事件の目撃者となったことで寮の見回りが行われることになり、それを担当するという警官だった。
 一成が一人にはならないことにほっとして、天馬は再びファン対応に戻る。陽気な人たちは心底楽しそうで、天馬の握手やサインに喜んでくれていた。
 途中からは他の人も混ざり始めて、思いの外時間が取られていた。
 それでも、最後の一人まで笑顔で対応をした天馬は、全てが終わったことを確認してポケットのスマートフォンを取り出す。一成の姿が見えなかったからだ。居場所を告げる連絡が入っていてもおかしくはないと思ったけれど、何のメッセージもなかった。
 ただ、一成のことだから勝手に帰宅するとも思えないし、警官と話をしているところなら見ていた。彼は交番勤務だと聞いている。路上で待つよりも安全だと、そのまま交番へ向かったという可能性はある。
 ひとまず駅前の交番へ向かおう、と天馬は思う。
 交番にいるなら警官に寮まで送ってもらえばいいのかもしれないけれど、迎えにいってやりたかった。一緒に帰るなら、その時隣にいるのは自分がよかったのだ。
 一歩足を踏み出した天馬は、一成に電話をかけようと画面を操作する。
 LIMEでメッセージを送ってもよかったけれど、最近の一成はよく電話をしているし、こっちのほうがすぐに気づくかもしれないと思ったからだ。

 一成の名前を選び通話ボタンを押したところで、天馬の耳に着信音が飛び込んだ。まるで、たった今自分がかけた電話に呼応するようなタイミングに、天馬の足が思わず止まった。
 ただの偶然だろうと頭では思う。だけれど、耳に響く着信音は未だ鳴り止まない。天馬がかけたコール音が途切れないのと同じように。
 同じタイミングで電話が鳴ったとして、すぐに出てしまえば着信音は途切れる。しかし、未だに音は止まないのだ。天馬の電話がつながる先のように。

「……一成?」

 まさかと思いながら、それでも一度もしかして、と考えてしまえば足は勝手に動いた。音の聞こえた方角――細い路地へと踏み入る。
 商店街の大通りと並行して走る、駅前の通り。二つを結ぶ路地は細く、店の裏側に位置していることが多いので雑然としている。
 申し訳程度の外灯はついているけれど、全体的に薄暗い場所だ。隠れ家的な店が構えられている路地もあるけれど、今天馬が踏み入った路地はどんな店もなく、寂れた雰囲気が漂っている。
 いつの間にか電話の音は途切れていた。それでも数歩を踏み出した天馬は、薄暗い外灯の下に広がる光景に目を見張った。
 警官が立っている。どこか呆然としたような表情で立ち尽くすその手には、鈍く光るナイフが一本。ぎくり、と体を強張らせた天馬はナイフから血が滴っていることに気づいて、思わず後ずさりしかける。
 しかし、すぐに足は止まった。
 警官の足元。路地裏にうずくまる小さな背中。にぶい外灯に照らされる綺麗な金髪。絶対に天馬が間違えるはずのない人。天馬が探していたたった一人。

「一成!」

 警官がナイフを持っているだとか、そんなことは頭から消えていた。一成に駆け寄ると、見慣れた一成のスマートフォンが地面に転がり、その上に血が滴っていることに気づく。
 よく見れば、うずくまった一成の下には血が広がっていた。警官のナイフ。誰かを刺した。誰を? 一成だ。

「っ、一成!」

 肩を掴んで一成の名前を呼ぶ。天馬の全身から血の気が引いていた。一成が刺された。怪我の程度は。意識はあるのか。答えてくれ。一成。思いながら反応をうかがうと、小さな声が落ちた。

「……テンテン……?」

 ゆるゆると顔を上げた一成が、天馬へ視線を向ける。その瞳はどこか朦朧としていたけれど、確かに天馬を見ていた。苦しそうに顔を歪めて息を吐き出しているけれど、天馬の名前を呼んだ。
 ただ、一成は両手で腹部を押さえていて、その手は真っ赤に染まっているし、出血は続いているらしい。救急車を、と思ったところで天馬はすぐそばにたたずむ警官の存在を思い出す。
 見上げれば、無機質な目でこちらを見下ろす警官と目が合う。ナイフを握りしめたことを察知した天馬は、とっさに声を張り上げる。

「誰か来てくれ! 怪我人がいる!」

 商店街の大通りに向かって声を投げる。舞台で培われた声量は、路地からでも確かに声を響かせる。大通りのほうが騒がしくなったような気配。
 実際に誰かが来るかわからない。ただ、「誰かが来るかもしれない」と思わせれば、凶行は防げると思ったのだ。
 案の定、警官はわずかな逡巡をにじませたあと、踵を返して駅前の大通りへと走り去る。本来ならあとを追うべきかもしれない。ただ、今の天馬にはそれよりも一成が心配だった。
 救急車を呼んだあと、天馬は一成と向き合う。
 顔は真っ白で苦しそうに息を吐き出している。どうして一成がこんな目に遭わなければいけないのか。唇をかみしめた天馬は、しかし息を吐き出すとやわらかな声で言う。

「大丈夫だ、一成。すぐに救急車が来る」

 肩を抱いてやると、一成の体がもたれかかってくる。自分の体を支えるほどの力がないのかもしれない。しかし、一成は無意識の内にそうしたのだろう。小さな声でつぶやく。

「ごめ、テンテン……」

 言いながら体を起こそうとするので、天馬は肩を抱く手に力を込めてきっぱり告げる。

「いい。体を預けてるほうが楽ならそうしてろ」

 そう言う天馬は、もどかしい気持ちになる。こんな時まで天馬のことを気遣わなくていいのに。血を流しながら、痛みにうめきながら、それでも天馬の負担にならないようになんて思わなくてもいいのに。

「――傷、触るぞ」

 まだ血が流れていることを察して、天馬はいつも持っているハンカチを取り出す。これで足りるとは思えないけれど何もしないよりはマシだ。
 一成はびくり、と震えた。
 痛みを予想してのものだと思ったけれど、止血のためには我慢してもらうしかない。一成の手に自分の手を添えるように、ハンカチごと傷口を強く押さえる。一成が、泣き出しそうな声を漏らした。

「テンテン、血がついちゃうよ……」

 一成の言葉が届いた瞬間、天馬を襲ったのは頭を殴られたような衝撃だった。
 どうして。なんでこいつは。こんな時まで、オレのことを考えるんだ。
 痛みにうめきながら、気にするのがオレに血がつくことなんて。触れられた傷が痛いと叫ぶのでもなく、泣き出しそうな顔でオレのことを気にするなんて。
 怒りにも似た衝動はしかし、別の意味を持っていることを天馬は知っている。
 あふれでる。こぼれていく。胸の内から、全身の全てへ広がっていく。狂おしいほどの感情は、こんな時まで天馬のことを思う一成への、どうしようもないほどの愛おしさだ。

「大丈夫だ。お前は自分のことだけ考えてろ」

 きっぱり言って、自分にもたれる一成の肩を強く抱く。もう片方の手で押さえている傷口からは、未だ血が流れている。一成は弱々しく「うん……」とうなずく。
 その声が今にも消えてしまいそうで、天馬の胸が騒ぐ。救急車はまだか。早く来てくれ。誰か、頼む。一成を助けてくれ。
 思いながら、天馬は口を開く。話を続けていなければ、一成の意識が途切れてしまいそうで怖かった。

「なあ、一成。10月になったら彗星を見に行くって話してただろ」
「――うん……」

 弱々しいながら相槌が返ってきて、天馬はほっとする。こんな風に話を続けるのは、一成の負担だろうか。だけれど、今この意識を途絶えさせてはいけない気がした。

「せっかくだから、夏組みんなで星のよく見えるところに行くか」

 未来の話をしようと思った。これから先のことを話せば、そこには一成がいる光景が確かなものになるような気がして。一成は、吐息で笑ったようだった。

「……めっちゃいいね」

 小さくか細い声が答える。天馬は泣きたい気持ちになりながら「ああ、いいところ探しておけよ」と答えた。未来の約束をするのだ。他でもない一成と、これから先までずっと共にいるのだと。
 それからいくつか他愛ない話をしていると、声が落ちた。か細い呼吸がどうにか声になったような、そんな響き。

「――テンテン……」

 肩にもたれかかる一成が、弱い声で名前を呼ぶ。どうした、とやさしく問いかければ震える声で一成は言う。吐息で紡がれるような、今にも溶けてゆきそうな声。

「こわいよ」

 耳に落ちた言葉に、天馬は一成を抱く手にいっそう力を込めた。一成が、肩にもたれていてよかったと天馬は思う。天馬の顔が一成には見えないから、天馬が泣きそうな顔をしていることなんて一成にはわからない。
 だって、天馬だって怖くてたまらない。このまま一成が、答えてくれなくなったら。一成の声が聞こえなくなったら。一成が何も言わなくなったら。一成が――死んでしまったら。
 しかし、天馬の答えはもう決まっている。一つ深呼吸をしてから、口を開く。

「大丈夫だ」

 堂々とした声で、何一つ動揺なんて悟らせない響きで告げる。それは天馬の強がりではあったけれど、同時に心からの祈りでもあった。大丈夫だ。一成、お前は大丈夫だ。

「オレがついてるんだぞ。お前は助かるし、夏組の舞台だって待ってるんだ。またみんなで、舞台に立つんだ。幕を開けるんだ」

 だから大丈夫だ、と一成に向かって言う。怖いと告げる一成に、自分の命が少しずつこぼれていく恐怖に震える一成に向けて。

「オレが言うんだ、間違いないだろ」

 祈りよりも深く、願いよりも強く、揺るぎのない意志できっぱりと言う。一成は吐息で笑ってから、小さな声で答えた。

「……そだね」

 天馬の体にもたれかかった一成の声。小さくて弱々しくて、だけれどきっとやわらかに笑っている。顔が見えなくても、それだけは確かだと天馬には思えた。















 病院に運ばれた一成は、そのまま手術室に入った。出血量が多く緊急手術の必要性があるという。
 天馬は病院から大まかな説明を聞いたあと、MANKAI寮へ連絡を取った。
 なかなか帰ってこない二人には夏組から怒涛の連絡が来ていたけれど、一つ一つに返すより監督に詳細を告げたほうがいいだろうと思ったのだ。
 手短に事情を説明して、運ばれた病院名を告げる。監督は数秒絶句していたものの、すぐに声を取り戻した。
 彼女はいつだってピンチに強い。一成の家族への連絡は自分がすると告げて、「天馬くんは一成くんについててあげてね」と力強く言ってくれた。

 手術が終わるのを待っていると、夏組のメンバーが息を切らしてやって来た。誰かが車を出して病院へ送ってくれたのだろう。
 見知った顔に天馬の張りつめた気持ちがゆるむ。ほっとして泣き出しそうになったけれど、今はその時ではないと思った。
 夏組は何も言わず、ただ手術が終わるのを待っている。その間に一成の家族もやって来たので、天馬は大まかな経緯を説明した。
 自分がついていたのに危険な目に遭わせてしまったことが申し訳なくて、深く頭を下げる。しかし、一成の家族は首を振ったし、夏組も同意を示す。
 何一つ天馬のせいじゃない。天馬が気に病む必要はない。それどころか、一成の父親は言うのだ。

「天馬くんにはいくら感謝しても足りないくらいだ。一成を見つけてくれてありがとう」

 路地で襲われた一成。誰の目もない場所だ。もしもあそこで天馬がやって来なければどうなっていたか、一成の父親は正しく予想していた。
 一度一成を刺しただけで、犯人は逃げたかもしれない。しかし、口を封じるために絶命させるという選択肢だってあったはずだ。
 あそこで天馬が来なければ、何度も一成にナイフを突き立てたかもしれない。だからこそ、天馬が一成を見つけたことは、この上もない僥倖だった。
 その言葉に、天馬は一成が危うい線上に立っていたことを思い知ってぞっとした。
 もしもあそこで、天馬が路地に踏み入らなければ。一成を探さなければ。一成に電話をかけなければ。何も知らずに路地を素通りしていたら、その間に一成は殺されていたのかもしれないのだ。

「――しゃんとしてなよ、ポンコツ」

 目の縁を赤くした幸が、天馬に向けて言うと背中を叩いた。
 強い目をして、いつもの憎まれ口に似て、だけれど告げられる言葉に潜むのは、天馬へのエールだ。自分の行動が一成を助けたのだと胸を張れと、そのまなざしが言っている。

「天馬くんがいてくれたから、カズくんきっと助かるよ……!」

 ぐっと拳を握り締めた椋が、涙で潤んだ瞳で真っ直ぐと告げる。慰めの響きは一切なかった。
 椋は心から思っているのだ。天馬がいたから、いてくれたから。だから一成は助かるのだと、天馬よりよっぽど強く信じている。

「うん……! カズさん、絶対天馬さんにお礼言うと思う!」

 椋と同じく涙目の九門は、しかし明るく言った。一成は助かる。ちゃんと自分たちの前に戻ってくる。そしたら、天馬に「ありがとねん」と笑うのだ。一片の曇りもなく、未来を信じるまなざしで九門は言う。

「てんま、よくがんばったねぇ。いい子、いい子。サンカクあげる!」

 にっこりと笑った三角は、いつの間にか持っていた小さなサンカクくんを天馬の手にそっと渡した。それから、手のひらを天馬の頭に乗せると何度も行き来させる。ありったけの愛情を込めた手のひらだった。
 夏組からの真っ直ぐな気持ちを受け取る天馬は、何を言えばいいかわからない。だけれど、彼らの愛情は胸の奥まで確かに届いた。だから、ただ「ありがとう」とだけこぼせば、夏組は穏やかに笑った。
 それからほどなくして、手術室から医師が出てきた。
 保護者だという一成の父親に向かって容態を説明する。淡々とした口調だった。手術は成功した。内臓の損傷は見られず、出血部位も塞がった。

「あとは本人の回復力次第になりますが、恐らく心配はないでしょう」

 明るさをにじませた声で告げられた瞬間、一成の父親が深く頭を下げる。母親も泣きながらお辞儀をして、一成の妹がぽろぽろと涙をこぼしていた。
 夏組は全員で視線を交わし合った。
 一成は助かる。大丈夫だ。助かる。ちゃんと夏組に戻ってくる。一成は助かる。
 わっと声を上げかけて、病院であることを思い出して慌てて声を潜める。しかし、漂う雰囲気からは歓喜の色がにじんでいる。
 それらを認めた天馬は、ほっと息を吐き出してから、気づいたようにスマートフォンを取り出す。監督たちが心配していることはわかっていたから、寮に連絡をしなくてはならない。
 電話のできる場所まで行ってくる、と告げて手術室から離れた天馬は、しばらく歩いてから立ち止まった。大きく息を吐き出す。スマートフォンを持つ手が震えていた。
 消えそうな一成の声。血まみれの手。いなくなってしまうんじゃないかと怖かった。一成が死んでしまいそうで怖くてたまらなかった。
 だけれど、一成は生きている。生きていてくれる。
 その事実を噛み締める天馬は、その場にしゃがみこんで泣いた。

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